アートデザインラボ|4歳からのクリエイティブスクール|世田谷区三宿・三軒茶屋・池尻大橋 読み込まれました

Interview

カメになりたかった7歳、14歳でDiscordコミュニティを回す。【ラボアーティスト vol.1】ネネコさん(中学3年生)

2026.08.21

取材・文:アートデザインラボ/2026年7月

顔も年齢も知らない、10人の仲間たち

彼女がいま向き合っているのは、1時間という長尺の動画だ。
中学3年生──本人は「年は多分14才、になったはず」「曖昧なんですけど」と笑っている──夏休み前に公開予定のゲーム実況動画を、ひとりで編集している。

「大前提として、動画編集が好きで。ハマってることではあるんですけど、たまに(大変すぎて)死んでる時があるんですよ」

ネネコさんはどこか他人事のように話す。
1時間の実況動画を編集する彼女のデスクトップには、10人弱のメンバーがボイスで参加した音源が並んでいる。そのメンバーとは、まだ一度も会ったことがないと言う。

「知らず知らずのうちに集まってて」

彼女は自分でGoogleフォームを作り、SNSで募集をかけ、Discordのサーバーを立ち上げた。集まったのは10人ほどの「ゲーム実況が好き」なメンバー。
しかし、年齢を書く欄を追加するのを忘れていたため「誰が何才でどんな人だか、全く分かってない」のだそうだ。
「自分のことも、たぶん中学生だとは思われてないと思う」。
それでも週1回、企画案が上がりみんなで一斉に同じゲームを実況して、彼女がその素材をつなぎ合わせて動画にする。

「編集がすごく大変」と言う。しかしそれ以上に、この「作業的に頑張るのが私しかいない」環境そのものを、彼女はどこか面白がっている。

カメのエプロン、絵本の記憶

14歳のネネコさんが、アートデザインラボに初めてやって来たのは、小学2年生になる直前。
当時、ネネコさんのお母さん(以下、ネネコ母さん)は「自我の芽生えを感じ取って」彼女がそれまで続けてきた習い事をすべていったんリセットしたという。「ぜんぶまっさらにして、何やりたい?って聞いたら、工作系やりたい、と言ってきたんです」

たまたま近所にオープンしたばかりのアートデザインラボが、その受け皿になった。
当時のメンバーは5名。ほぼ1期生である。

はじめて作ったのは、大好きなペットのカメをモチーフにしたエプロン。
それからカメの絵本、ファンタジーフォトパーティ、ロケット制作、ユニットで工作系YouTubeチャンネル開設、NFTアート、3D制作──と、7年間近くずっと作る手を止めなかった。

「はじめはシンプルな工作でした。カメになりたかった時期が1〜2年ありましたね」

そう振り返るネネコ母さんの隣で、当のネネコさんは「全然覚えてない」と笑う。
あの頃の「作りたい!」衝動は、いま彼女の中でどのように変化しているのだろう?

カメの甲羅を、みどりで塗り込んでいく
カメの絵本「ずぅ〜っとカメといっしょにいたい」
ファンタジーフォトパーティ
空想の世界を合成写真で形にした作品
描いた絵を持ち寄った発表パーティ
段ボールでの大型工作
大型の段ボール工作を組み上げる

「多趣味すぎて、つながった」

工作から映像へ、映像からプログラミング、3D、音楽、ギター、ゲーム実況、コミュニティ作りへ──。他人の目には、彼女の歩みは急速に変化しているように映るかもしれない。しかし、本人の実感は違う。

「どんどん変化していったよっていう感じじゃなくて、多趣味すぎていろんなことをちょこちょこ中途半端にやってたら、つながってった、みたいな」

この「繋がる感覚」を陰で支えていたのが、ネネコ母さんのスタンスだ。
「集中している時に止めてはいけない」──何かの記事でその説を知ったネネコ母さんは、それ以来、ジャンルを問わず娘の集中を止めなかった。

ゲームでも、YouTubeでも、ギターでも、「止めない」。勉強だから許す、ゲームだから止める、といった仕切りを最初からそもそも作らなかった。

ちなみに、そのギターも入り口は工作だったという。「それこそ工作が好きで、作りたいっていうので」──最初の1本を、彼女は自分の手で組み立てた。

自分の作品をみんなの前でプレゼンテーション
仲間と一緒に企画を練る
アイデアをワークシートに書き込む
ユニットで開設した工作系YouTubeチャンネルの撮影
自作セットを動かしながらの撮影
パソコンでのデジタル学習
iPadでのデジタル制作

「きらめきを求められる世界」から降りて

かつてネネコさんは、演劇やダンスの舞台にも立っていた。しかし途中で、その道から降りている。
「演劇とかダンスって、実力も必要だと思うんですけど、どちらかっていうとその人の持っている“きらめき”が求められるジャンルだと思っていて。実力だけでやってる人ってかっこいいなって個人的に思ったんです。」

だから裏方へ──というのが、彼女の選択だった。
動画編集は、まさにその「実力の世界」に見えた。
しかし現在、YouTubeでは演者としても登場している。
学校の音響や照明の先生が繰り返し口にする「表舞台の人は裏方を、裏方の人は表舞台を知っておいた方がいい」という言葉に、彼女は自分の「多趣味な歩み」の答えを見つけていた。

「プロの人は違う視点を持ってるんだな、と思って。それを聞いてから(自分も)ちょっといいルートを辿ってきたのかもしれないな、と思う」

AIは使う。でも「気に食わない」

彼女はAI世代である。
ChatGPTを日常的に使い、キャラクターのセリフの参考にしたり、大人相手の丁寧なメールの下書きに使ったりしている。「謙虚な人ってどんなことを言うんだろう」といった問いを、ためらいなくAIに投げる。

一方で「何を任せて、何を任せないか」の線引きが極めて明確だ。

「テロップの自動機能は、あんまり気に食わなくて。うまくいかないというより、面白いところで文字を拡大したり、強弱をつけたりっていう、それがまだできないので」

「実況動画の面白さはテロップのクオリティに“超”出るから」と、彼女は言う。
だから、そこだけは絶対に手作業。1本の動画に、数百のテロップ。
1つずつフォントの大きさと強弱を、丁寧に決めていく。

「AIがもっと動画編集できる形になったら、多分めっちゃAIに染まっていくのかな」
ただ、今はまだAIにすべてを任せられない。
それが、彼女の職人的な線引きだ。

「底辺YouTuber」観察からの、コミュニティ論

冒頭で紹介したDiscordコミュニティ。この立ち上げの背景には、彼女なりのフィールドワークがある。彼女は登録者100人以下の「底辺YouTuber」と呼ばれる層を、丹念に観察してきた。

「1人でもグループでもすごい大変そうだし、その上なんか知らんけどアンチもついてるし。ずっと見てたのに急にアカウント消えちゃうYouTuberも多い。思ってたより(登録者が)伸びなくて、みんなモチベなくなる、みたいな感じ」

メンバー固定のグループはいつか崩れる。ならば「コミュニティにすればいい」というのが、彼女の結論だ。誰かが抜けても、新しい人を入れられる。
ただし「絶対やめない人」が真ん中に必要。その1人に、自分がなればいい。

「多分やめることはない。トラブルも自分的には、面白いなーとしか思ってなくて。すごい能天気なんですけど笑。トラブルも動画にすればいいし、ネタになるし」

14歳が語る組織論としては、正直、大人が唸るレベルの境地である。
彼女は、EXILEが取り入れたコミュニティ型のグループモデルや、アメリカのヒップホップクルーが持つ「入れ替わりを前提とした持続性」に、直感的に触れている。

一方で、現実的な悩みも抱えている。
「進行補助とか撮影補助の希望者はいるんですけど、サムネ制作とか動画編集志望が本当に1人も来ない。同じ裏方なのに、なんでだろう?って」

その後、候補は数人来たもののSNSを覗くと、不穏な内容だったため「やべぇやつかも」と見送っているんだそう。作る人ならではの「個性の濃淡」を、14歳はもう見抜く。

ネネコさんが立ち上げたコミュニティ「やすらむ隊」のオリジナルテーマソング。活動の拠点であるYouTubeチャンネル「やすらむ」では、この曲をはじめ、メンバーみんなで収録しネネコさんが編集を手がけた動画が公開されている

「10代のためのサイトを、10代がやる」意味

いまネネコさんがアートデザインラボで挑戦しているのは、10代のための映像・ロゴ制作を請け負うサービスの立ち上げだ。ウェブサイトもショップもまもなく公開する。

ターゲットを同世代に絞った理由を、彼女はこう説明する。

「例えば自分が、大人の人に何かを依頼するのって、ちょっとハードルが高いし、値段も高いと感じる。依頼者側に立った時、頼みやすい方がいいだろう、みたいに思った。」

発注側の心理的ハードルを、自分の年齢からそのまま計算してデザインしている。
価格、距離、頼みやすさ──マーケティング用語で言えば「共感マーケティング」だが、彼女はもちろんそんな言葉を使わない。ただ、自分がいちばん納得できる線を、自然に引いているだけだ。

「あんまりパッとした目標はないんですけど、2、3回頼んでくれるリピーターが増えると、楽しくなりそうだなぁって」──と、ふんわり、ふんわり繰り返す。

ネネコさんが手がける映像・ロゴ制作サービス「寝猫(ねねこ)」のWEBサイト。ノーコードツール「STUDIO」を使い、ロゴからデザイン、文章まで自分の手で作り上げた。依頼は10代限定、支払いは保護者同伴──同世代が安心して頼める仕組みが、細やかに設計されている(画像をクリックするとサイトへ)

「いま職業を決めるのは、逆に危ない」

「将来は何になりたい?」
定番の質問に、彼女の答えは意外なほどはっきりしていた。

「いまAIってすごい進化してて、私が大人になる頃には、たぶん想像できない範疇にいると思ってます。今ここで「これだ」って決めるのは、逆に危ないような気がする、自分の中で。その職業なくなるかもしれないし」

「将来を決めないこと」を、14歳が意識的に選択している。
これは、目まぐるしく変わっていく社会の輪郭を彼女なりに観察した結果なんだろう。

「好きが才能とは限らない」──同世代へのメッセージ

「好きなことがなかなか見つからない」という同年代の子に、何かを伝えるとしたら?

「好きなことが才能って、あんまりないと思うんですよ。自分でもまだ見つけられてないし」

「今、自分は動画編集が好きだけど、何を作ればいいか分かんない時期もあったんですよ。その時に何をしたかっていうと、とりあえず自分を追い込んでみようと。
期限を決めてYouTubeやって。追い込んでずっと編集やって、逆に嫌になったら、それは好きじゃないってことだな、と思って。どんなに追い詰められても楽しい!と思えたら、それが結果、好きなことなのかな」

「好き」を、感覚ではなく行動で確かめていく。本人はどこか飄々としていて「自分を追い込んでみる実験」として楽しんでいるようにも見える。その軽やかさこそ、令和のクリエイターらしさなのかもしれない。

アートデザインラボって、どんな場所?

7年間通い続けたアートデザインラボは、彼女にとってどんな場所か。忖度なしで聞いた質問への答えは、とてもシンプルだった。

「知識をくれる場所だな、って思ってて。AIの最新情報だったりとか、それにまつわる雑談だったりとか。それが結構ためになる。(大人の話でも)中学生の自分が聞けるなら、他の人も聞けるんじゃないかなと思う。」

7年間「何かを教わる場所」というより、新しい知識や考え方に出会える場所だった。

ネネコ母さんは、7年間を振り返ってこう語る。

「この子が、声を発して自分の気持ちを言えるっていう場所が、ここだけなんですよ。小さい時から通って、慣れ親しんだ人たちがいる場所に、ずっと通い続けることって実は難しいじゃないですか。それでもずっと変わらずアートデザインラボを続けてきてくださったことに対して、感謝ですね」

2026年
2019年

編集後記

7歳の「カメになりたい」は、14歳のDiscordコミュニティには見えない。
けれど本人の中では、その7年間は一本の線だった。
大人は、どうしても今の結果だけを見てしまう。
でも子どもは、自分でも気づかないまま、好きなものをつなぎ合わせながら未来をつくっていく。
だから私たち大人にできることは、その線を急いで伸ばすことではなく、途中で切らないことなのかもしれない。
子どもの『意味がなさそうに見える夢中』を、大人はどこまで信じて待てるだろうか。

アートデザインラボが大切にしているのは「こどもたちの好奇心と表現を守ること」。
ネネコさんが「知識に出会える場所」と語り、ネネコ母さんが「自分の気持ちを言える場所」と語ったように、その二つは決して別々のものではない。安心して自分を表現できる居場所があるからこそ、好奇心は育ち、挑戦する勇気が生まれる。
このインタビューは、私たちが掲げるミッションを、あらためて見つめ直す時間になった。

失敗やトラブルさえ面白がれる軽やかさと、未来を見据える冷静さ。
その姿は、いま10代と向き合うすべての大人にとって、きっとひとつの問いになるだろう。

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